Tageliet──永遠の秘薬──
「イザベラ? お前、本当に大丈夫か?」

「私は正気よ! 疑うの!? 彼はいたわ。伝説でも何でもない、彼は⋯⋯ヴァンパイアは存在する」

「そんなはずないだろ? やつらはもう四百年も前に絶滅してる。もはやただの伝説だ。生き残りがいるなんて話、俺は聞いたこともない。そもそもどうやって生き延びてきたって言うんだ?」

 ヴァンパイアだろ? とライナーは声を上げた。

 彼らには生き血が必要なはずだと⋯⋯。

「けどそれらしき被害報告なんて、今まで一度も上がっていない。誰にも気づかれずに、なんて土台無理な話だ」

「きっと何か秘密があるのよ! 彼は私の血を欲するどころか、命を救ってくれたわ! そんなことってある?」

「なっ⋯⋯どういうことだ? 怪我してたのか?」

「いや、まぁそう⋯⋯みたい。重症だったって聞いたから。けれど不思議なの、体には傷ひとつないの」

「聞いたって⋯⋯誰から?」

「目覚めた時、そばにいてくれた⋯⋯人が⋯⋯⋯⋯」

 ヴィクトール⋯⋯、なぜかその名を口にできなかった。

 彼に狂気を向けられた時のことがまだ鮮明に思い出され、心が躊躇ったからだ。
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