Tageliet──永遠の秘薬──
「申し訳ないが、その姫君を預かりたい。こちらに渡してもらおう」

 そう豹変したギルベルトは、手にしていた剣を引き抜きその剣先を彼の目の前につき出す。ライナーはそんな動作にも少しも動じず、堂々と大地を踏みしめていた。

「例えどのような理由があろうとも、イザベラ様をお渡しすることはできません」

「国王の命令であってもか?」

「どなたの命令であっても⋯⋯です」

 凛々しい彼のその姿に、纏うオーラは軍部の総司令官という威厳。

 きっと、ギルベルトも面白くないに違いない。

 幼い頃からイザベラは、この「ギルベルト・アーレ」という人物がどこか苦手だった。本心の読めないその飄々とした態度もそうだが、いつも小さな笑みを浮かべているかのような表情が不気味で堪らなかったのだ。何を考えているのかも分からない彼の中には、どす黒い何かが見え隠れしているようで。

 それがここに来て、少しずつその正体を覗かせ始めていた。
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