Tageliet──永遠の秘薬──
「ヤツらの狙いが『血清』なのだと気付き先回りしたつもりだったが、まんまと盗まれた。恐らく五本。『誓いの書』は俺が持っていたから無事だった」

「『血清』って⋯⋯何の?」

「お前が今聞いただろう? 生き血を求めずになぜ、生きながらえてきたのか⋯⋯と。────それが答えだ」

「それが、あなたの秘密⋯⋯」

 ギルベルトがその『血清』をどうしようとしているのか? クラウスに尋ねても「俺が知るか」とけんもほろろ跳ね返されイザベラは肩を落とす。

「だが、危険なことに変わりはない」

 そう零すクラウスは、静かに目を伏せた。

 すべての始まりは、やはりこの『血清』なのだと。その存在が災いを生むのだ。

 しかし彼にはどうあっても、その薬は手放せなかった。

 心に湧き上がる言葉にできない感情に、彼は苦しそうに眉を寄せる。そしてそのまま皆に背を向けると、何も言わず階段を上がる。

「ヴィクトール、後は頼んだ」

 そう言い残して、クラウスは暗闇の中に姿を消した。
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