Tageliet──永遠の秘薬──

゚・*:.。❁ 五、『Tagelied』

 今宵、夜空に浮かぶは下弦の月。

 淡く照らされるその光の中、クラウスはガラスの小瓶を手に物思いに耽っていた。

 永遠を生きる────その意味を。

 果てしなく長い年月、自身に問いかけ続けたその答えは未だ見つからぬまま。使命だと受け入れた孤独も、それが何故自分だったのか? 納得させてくれる者はもう、誰ひとりとしていないのだ。

 死ねぬ存在、この身体⋯⋯その『血』が憎らしくて堪らなかった。

 しばらくの後、小瓶の口を塞いでいるコルクの蓋を抜き取ると、それを一気に飲み干す。茫然と、ただ立ち尽くしているだけのように、その時の彼女(・・)には見えていた。

 けれど事態は急変する。

 手から小瓶が滑り落ちた次の瞬間、彼の体はその場に崩れ落ち動かなくなってしまったのだ。
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