Tageliet──永遠の秘薬──
「決して覗くな」
そう言われていたにも関わらず、イザベラは好奇心に掻き立てられそこにいたのだ。とは言え、この時ばかりは軽率な自身の行いに酷く後悔していた。
堪らず彼の側まで駆け寄ってしまったことで、除き見ていたことが明らかになる。いつものクラウスならば、「出て行け」と彼女を一蹴しただろう。けれど今の彼は、そんな一言さえ口に出せないほど苦しんでいた。
「────クラウス! ねぇ、クラウス!! しっかりして!」
全く状況が分からないまま、歯を食い縛り苦痛に耐えているその様子に、ただ必死に呼び掛けることしかできない。「どうしよう?」と一人慌てるだけで、何一つ解決できない非力さ。そのクセ、彼女はとても大きな問題に自ら首を突っ込んでいたのだ。
不意にクラウスの体の硬直が解け、そのままぐったりとなる。抱き起こし名を呼ぶも返事はなく、閉ざされたままの瞳に一抹の不安が過ぎった。
呼吸を確かめるため彼の顔に耳を近づけると、ゆっくりと規則的に繰り返される生命の息に、意識を失っているだけなのだと安堵。イザベラはそのまま彼の頭を膝にのせ、その頬に触れる。
淡い月明かりの中、床に転がる空の小瓶。もしやとそれを拾い上げた。
「⋯⋯血⋯⋯清⋯⋯⋯⋯」
死んだように眠るクラウスは、この世のどんなものより美しかった。
そう言われていたにも関わらず、イザベラは好奇心に掻き立てられそこにいたのだ。とは言え、この時ばかりは軽率な自身の行いに酷く後悔していた。
堪らず彼の側まで駆け寄ってしまったことで、除き見ていたことが明らかになる。いつものクラウスならば、「出て行け」と彼女を一蹴しただろう。けれど今の彼は、そんな一言さえ口に出せないほど苦しんでいた。
「────クラウス! ねぇ、クラウス!! しっかりして!」
全く状況が分からないまま、歯を食い縛り苦痛に耐えているその様子に、ただ必死に呼び掛けることしかできない。「どうしよう?」と一人慌てるだけで、何一つ解決できない非力さ。そのクセ、彼女はとても大きな問題に自ら首を突っ込んでいたのだ。
不意にクラウスの体の硬直が解け、そのままぐったりとなる。抱き起こし名を呼ぶも返事はなく、閉ざされたままの瞳に一抹の不安が過ぎった。
呼吸を確かめるため彼の顔に耳を近づけると、ゆっくりと規則的に繰り返される生命の息に、意識を失っているだけなのだと安堵。イザベラはそのまま彼の頭を膝にのせ、その頬に触れる。
淡い月明かりの中、床に転がる空の小瓶。もしやとそれを拾い上げた。
「⋯⋯血⋯⋯清⋯⋯⋯⋯」
死んだように眠るクラウスは、この世のどんなものより美しかった。