Tageliet──永遠の秘薬──
❁*。




 彼が目覚めたのは、それから二時間ほどしてから。

「クリスティーナ⋯⋯?」

 ぼんやりと静かにそう呟く彼に、傍らに付き添っていたイザベラは首を傾げる。

「クラウス? 大丈夫?」

 そう呼びかければ、クラウスは勢いよく起き上がり辺りを見回した。

「ちょっ、ダメよ! もう少し横になってなきゃ」

 その場にいる人数を把握し「大丈夫だ⋯⋯」と、短く細い息を吐く。必死で制止するイザベラに対し、クラウスは軽く嘲笑った。

「覗き見とはいい度胸だな。見ても良いことなどなかっただろう?」

 冷たくそう言われ、「ごめんなさい」としか言い返せない。

「クラウス・リーフェンシュタール、俺たちに聞かせてくれないか?」

 そう唐突に口にしたのはライナー。

「なぜ、お前一人が生かされたんだ?」

 その理由をいちばん知りたいのは自分だと、静かに瞼を閉じる。蝋燭の柔らかな灯火が、美しいヴァンパイアの横顔をそっと照らしていた。
< 93 / 131 >

この作品をシェア

pagetop