音のない世界に生きる私が、あやかしの妻になりました

「呪いのせいだよ」

 そう、呪いだ。
 桜も退けたあやかしから受けた呪いだと思い込んでいた。

(あの時傷を負って、その時に呪いをかけられたのではないの?強力なあやかしは、呪いの力も持っているから…)
「それは、あやかしの、せいで…」
 桜の言葉に、雪平は被せるようにして叫んだ。

「御影が作った呪いなんだよ!!」
「え……?」

 桜の隣で、黒稜も驚いたように目を見開いていた。

「御影 黒稜、お前の父親が作り出した呪いだ」

 雪平の話しによると、桜の父親である道元達の世代は、陰陽師同士の争いが絶えなかった。
 昔から活躍し注目されていた陰陽師達であったが、陰陽師の力が認められ、勲章や報酬がそれなりの好待遇になったのは、道元達の世代からだった。
 それ故、陰陽師同士の争いも絶えなかったのだ。
 誰もが帝に認められたいが故強い力を欲し、邪魔な同業者がいればそれを排除することも厭わなかったという。

 そこで陰陽師らしからぬ、強大な黒い力を手にしてしまったのが御影家だった。

 黒稜の父は、陰陽師としてそれほど秀でた力はなかった。真面目にこつこつとあやかし退治を生業としていたが、そんなことでは帝のお抱え陰陽師として名を上げるのは難しい。

 そこで他の陰陽師達を蹴落とそうと考えたのだ。

 何か、他の奴らが陰陽師として生きていけなくなるような、そんな何かはないか。
 現在の御影家に蔵書が山ほどあるのは、そんな黒稜の父の研究の成果なのかもしれない。

 そうして御影が作り上げたのが、「陰陽師としての力を奪う術」、「五感に影響を及ぼす術」、という二つの強力な呪いの術式だった。
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