オレンジじゃない夕方
古い書棚に陽が差して、微かに埃が舞っているのが見える。
目の前には色とりどり、大きさも様々な本がぎっしり頭の上まで並んでいる。
うちには本だけ沢山あった。
人に本を貸したことはあったが、男子にはまだなかった。
好みもある。
全然趣味じゃない本を渡されたら迷惑だ。
書棚の横の椅子に座って、冒険もの、日常もの、魔法ものと見ていく。
恋愛ものは貸せないなと思って、お気に入りの恋愛小説を伏せた。
頭の中でふと、敬が、飲み物を飲みながら、静かにページを捲るワンシーンが浮かんだ。
さらさらの黒髪が顔にかかっても、想像の敬は表情を変えない。
想像の中の敬の口が開いて、私の名前を呼んだ。
……。
結局、敬のために、私は冒険ものの中編を選んだ。