オレンジじゃない夕方
08
もうすぐクリスマスが来る。
それはお昼休みだった。私はお弁当を食べ終えて、お気に入りの小説を開いていた。
小説は恋愛ものだった。甘いばっかり、コメディも入った軽いやつ。普通の本に混じって、私はたまにそんなのも読むのだった。
「原さん」
振り向くと、敬が立っていたので、私は危うく本を取り落としそうになった。
「どうしたの?」
「ううん」
私は慌てて本を隠した。
「原さんに頼み事。いい?」
「何?」
「新しい小説を買いたいから、選ぶのを手伝ってくれない?」
「小説を?」
敬の中では、本→私という構図が出来上がっているらしい。
「うん。自分でも買ってみようと思って」
敬が言った。
「好きなのを選ぶだけだよ」
私が言った。
「オススメを教えて。買ったことないんだ」
敬が言った。続けた。
「それで本を買った帰り、一緒に遊んでいこうよ」
「え」
「良いでしょ?」