オレンジじゃない夕方
校門。枯れた白い木々。花壇。
前庭を抜けて早足で歩いて昇降口に入る。
ガラガラと戸を開けて教室に入っていくと、クラスメート達はもう大方登校していた。
細木冴が私に気づいて、寄りかかっていた窓際から軽く手を上げた。
「おはよう」
「おはよう」
冴が言った。
「昨日コンビニに行く途中、前川くんと真咲が一緒に居るのを見ちゃったよ」
「ああ。」
私が言った。
「クラス委員の手伝いだよ」
「そうなんだ。昨日剣道部体育館で試合してたよ。前川くん、行かなくてよかったのかな。」
冴が言った。
「華道部も昨日展示だったけど」
「あ、見たかった」
「大した事なかったよ。いつものちっこいやつ。それよりは前川くんの道着姿の方が良いな。」
冴が続けた。
「前川くんにはあの剣道のお面みたいのを被らないで欲しいような。勿体ないから。」
「……」
「真咲になら脱いでくれるよ。でも」
冴が待ったをする時みたいに両手を上げた。
「この間聞いたんだけど、前川くんって好きな人居るらしいよ」
「……ふーん」
「ふーんで良いんだ。私はがっかりした」
「別に、関係ないよ」
「真咲、前から前川くんと時々話すでしょ。期待しちゃうとかわいそうだからさ」
冴は宿題を持って来るのでチェックしてくれと言って、私の席を離れた。