オレンジじゃない夕方





 教室に入って来た担任の宇多先生は挨拶をする前に黒板の隣にあるロッカーを開けた。


 待っている生徒達に、先生は棚からお手製のくじの箱を取り出して掲げて見せた。



「今日は席替えをします。」



 好きな人が居ない私は、取り立ててどの席という希望もなく、片肘をついて黒板を見ていた。

 あえて言うなら窓際が良い。



 回ってきたくじの数字を黒板で探すと、席は廊下側の一番後ろの席だった。




 机に椅子を逆さにして乗せて、生徒達が移動を始める。





 教科書を入れたまま机を持ち上げて動かしていくと、同じようにして移動してくる敬にかち会った。



「隣?」



 私は、机の中のものが重くて、腕を取られそうだったのを、そう感じなくなった。



「みたい」



 私が言った。



「ラッキー。原さんの隣、嬉しい。」



 敬は普通にそういう事を言う。敬は照れない。



「よろしく」



 私は平静を装って、机から椅子を降ろした。





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