オレンジじゃない夕方
03
日直は席順に、一人ずつ回ってきた。
昨日は、明日日直だな、とその事ばかり考えていた。
黒板の横の壁に掛かっている日誌を取りに行くと、ロッカーにクラスの目標が貼り出されているのが目に入った。
一日一善。
それもまた、と思いながら、席につく。
白い日誌の帳面には、日直の名前と、欠席者の名前と、今日の報告を書く欄があった。
日誌のページはがら空きで、余白がなんだか寂しい。
酔狂に、私は鉛筆で日誌に落書きをした。
ボールの上に立っている犬の絵。
思い切り欠伸をする猫の絵。
私が楽しんで描いていると、後ろから声がした。
「絵もつけてくれるの?」
敬だった。
キョトンとした顔で、日誌を眺めている。
私は慌てて腕で覆って日誌を隠した。
「原さん、絵、描くんだね」
敬が言った。
「書いたら消さないで残して置いてね。後で見るから。」
私の下手な絵は見せられない。
敬が席を離れて見ていない隙に、私は日誌の絵を消しゴムで急いで全部消した。
日誌を閉じると、私はやり果せた気持ちで黒板横に片付けに行った。