長尾さん、見えてますよ
イレギュラーはいらない





「…はぁ」





―前のバイト先が閉店して、先週から新しく勤め始めた喫茶店。





仕事内容も、職場の人間関係にも、特に不満なく勤められている。





勤務開始から一週間経った今日もそこに変わりはない。





…が。






「長尾さん、ドリンクの補充お願いしてもいいかな?」





「あ、はい」





「…何で誰も気づかないんだよ」






思わず独り言を呟いた後にハッとして、テーブルの片付け作業に戻る。






「…はぁ」






この作業の間だけで二回もため息をつくほど厄介なことに、頭を悩まされゲンナリする。





何故こんなことに。





何故気づいたんだ俺は。





普段から人に興味を持つ方ではないし、たとえ同じような場面に出くわしてもまず何も言わないし、気にはしない。





同じような、の条件付きだが。





つまり、さすがにバイト先の先輩である長尾さんのブラジャーが見えているとしたら。





それは当然、状況が違ってくるという話になる。





というかもう、なってる………。





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