長尾さん、見えてますよ
 




事の元凶というのも、窓際で作業していた長尾さんのシャツが、差し込んだ日光によって透けてしまったこと。





それまで全く気がつかなかったが、一度見てしまった後に日光なんかなくとも透けてることも気がついてしまった。





人に興味はない。関心もない。周りも見てなんかいない。





それが今回、たまたま目にしてしまったことで意識せざるを得なくなってしまった。





なんて面倒な…。






「…はぁ」






本日三回目のため息を吐くと共にテーブルの片付けも完了し、最後にマニュアル通りテーブルの備品チェックをして厨房に戻る。






「店長、テーブル片付け終わりました。ナプキンの補充したいので場所教えてもらっていいですか」





「ああ、ナプキンね。たしか裏の棚にあるんだけど、少し分かりにくいかもな…。僕はこれからバイトの面接あって抜けちゃうから、長尾さんに教えてもらっていいかな」






―でた、長尾さん。





内心戸惑いつつも、平静を装い返事を返す。






「分かりました」






正直関わりたくはないが、仕事なので仕方なしに姿を探すことにした。





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