長尾さん、見えてますよ






「……」






レジについた後も、俺の視線は長尾さんに釘付けだった。





というのも、老夫婦と長尾さんという異色すぎる組み合わせが気になったのとレジの暇さが相まって、なんとなくあの卓を見ていた。





すると、微かだが確実に、笑顔を浮かべて接客している長尾さんの姿が視界に入った。






「…笑うんだな…あの人でも…」






今朝真島から長尾さんの話題を聞いたからだろうか。





驚きから思わず独り言が溢れた所で、ふと長尾さんに入れ込んでいた真島が気になり姿を探すが、こんなときに限って厨房のヘルプに行っていた。





心のなかで真島に同情しつつ、また長尾さんに視線を向けると、既に注文を聞き終え厨房に行ったようだった。






「…あの、お会計いいですか?」





「―あ、はい。伝票お預かりします」






いつの間にか目の前にいたお客さんの呼び掛けでハッと我に返り、レジ作業を済ませてやっと業務に意識を戻した。





その後も店は混み続け、長尾さんにフォローをしてもらったお礼を言うタイミングもなく店は閉店の時間を迎えた。





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