長尾さん、見えてますよ






———————…






「―よし、あとは集計するだけだからもう上がっちゃっていいよ。みんな今日もお疲れ様でした」






店長の呼び掛けにそれぞれお疲れ様ですと声を掛け合い、帰り支度を始めにバックヤードに向かう。






「なー佐渡お前今日さぁ、」






しばらくして、キャップを被りリュックを背負った真島が声をかけてきたが、それどころではなかった。






「―ごめん真島。俺ちょっと用事あるから急ぐわ」





「え?おー…気を付けてなー」






バタバタと支度を済ませて急ぐ俺にポカンとする真島をおいて、俺は店を後にした。





街灯の光が照らす夜の道を、小走りで駅の方へと向かっていく。





立ち並ぶ灯りの一つが、長尾さんの後ろ姿を照らしていた。






「―あの、長尾さん!」





「………」






声をかけられたことに気が付いて振り返るが、無表情なのは変わらなかった。






「…佐渡くん、ですか」






走ってくる俺の姿を認識した長尾さんは、ぽそっと呟き、肩にあるトートバックをかけ直した。






「…あの、今日のことなんすけど」






少し乱れた呼吸を整えながら長尾さんの表情を見る。





相変わらず何を考えているのか分からない顔をしていたが、目線はしっかり交わっていた。






「…あの夫婦と、仲良いんですか」





「…え」





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