クールな綺堂くんの理性が夜だけ狂います。
「あ、あの、大丈夫ですか?」
あんまり大声で話すと誰かに見つかっちゃうかもだし。
さらに男の子に近づいて、耳元でささやくように声をかけてみた。
すると、ピクッと身体が動いて......ゆっくり顔が上がった。
薄っすら目を開けて、わたしを見てる。
吸い込まれそうになるほどの、真っ黒な瞳。
一瞬、その瞳にとらわれて動けなくなるくらい――澄んで、儚げで、きれい。
目が合うだけで、こんなに惹ひ き込まれてしまうなんて。
この瞬間だけ、時間が止まってるような錯覚を起こしそうになる。
「あー......最悪」
面倒くさそうに、わたしに向かってそう吐き捨てた。
第一声がこれって。
わたし何か余計なことしたかな......なんて、考える余裕はなくなり、身体の力が抜けて、男の子のほうに倒れ込んだ。