最期の言霊

俺は驚いた。蜂に言葉が通じたのか?
というか笹森さんが凄い、、、。

あんな大きなスズメバチを見て、騒がない女性なんて見たことがなかったからだ。

笹森さんは、再び参道の左端を歩き出すと、そよ風に揺られる緑の香りを吸い込んで、深呼吸をしていた。

それとは正反対に、またあの大きなスズメバチが来たらどうしようと挙動不審なカッコ悪い俺。

そして、神社の小ぶりな本殿前に到着すると、俺たちはお賽銭をし並んで参拝をした。
正確には、神社の作法を全く知らない俺は、横目で笹森さんを見て、真似していただけだ。

参拝が終わると、鳥居の方を向いて立ち止まり緑をを眺める笹森さん。

すると、笹森さんが突然「ねぇ、隼人くん。」と俺を呼んだ。

「ん?」
「隼人くんは、言霊って信じる?」
「ことだま、、、って、あの言霊?言葉には魂が宿るとかってやつ?」
「うん。」
「ん~、どうだろうなぁ。俺、そうゆうのよく分からなくて。」

あまりそうゆうことを信じない、というより興味がなかった俺は、苦笑いを浮かべながらそう答えた。

笹森さんはクスッと笑うと、「確かに興味なさそうだもんね。」と言った。

「言葉にはね、本当に魂が宿るんだよ。良いことを言えば、前向きになれる。悪口を言えば、自分に返ってくる。」

そう言ったあと、笹森さんはこちらを向くと「わたし、言霊使えるんだぁ。」と信じられないことを打ち明けてきたのだった。

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