最期の言霊

俺は、笹森さんの言葉が理解出来ず、「えっ?」と思考が停止していた。
きっと笹森さんには、俺の頭の上にはてなマークがたくさん見えていたことだろう。

笹森さんは「みんなには、秘密ね?」と言うと、鳥居に向かってゆっくり歩き出し「お腹空いたね〜。」と言った。

それから俺の頭の中は、「言霊」と「秘密ね」でいっぱいだった。




「なぁ、伸也。言霊って信じるか?」

休み明けの月曜日。
隣のデスクで仕事をしていた伸也に俺は尋ねた。

伸也は突然の質問に「はぁ?」と言い、椅子に座ったまま俺の方に近寄ってきた。

「言霊?どうしたんだよ、急に。楓ちゃんとのデートが楽し過ぎて、頭おかしくなったか?」
「いや、ちょっと、、、。」
「それより、どうだった?手繋いだか?チューまでしたか?!」

そう言って茶化してくる伸也に「付き合ってもいないのに、そんなことできねーよ!」と小声で言い返す俺。

やっぱり言霊って、信じる人はなかなか居ないよな。
実際、俺もその一人だ。

すると、総務部の方が何やらざわつき出した。

何かと思い、ふと見てみると何やら岩井さんが焦っていて、ハゲ課長に言い訳をしているところのようだった。

伸也と二人で「またなんだぁ?」と見ていると、こっそりとヒカリが近付いて来た。
そして、「岩井さん、大変なことやらかしたらしいよ。」と教えてくれたのだ。

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