最期の言霊

ヒカリの話によると、岩井さんは上層部の給料計算の管理を担当しており、専務と部長の給料を逆に振り込んでしまった挙句、給料計算まで間違っていたらしい。

「うわぁ、最悪だなぁ。もうあのおばさん、クビで良くない？」
眉間にシワを寄せながら伸也は言った。

「こないだ、楓ちゃんにはダブルチェックが大事だ！とか騒いでおきながら、自分はダブルチェックもせず、誰の確認も取らないでやったらしいよ。いっつもテキトーに仕事してるから、こうなるんだよ。意地悪すると、自分に返ってくるって本当なをだね〜！」
ヒカリはそう言うと、自分の部署である販促部に戻って言った。

「意地悪すると、自分に返ってくる、、、かぁ。」

俺は、笹森さんが言っていた言葉を思い出した。

"良いことを言えば、前向きになれる。悪口を言えば、自分に返ってくる"

これはきっと、こないだ笹森さんに責任を押し付けようとしていたことが、岩井さんに返ってきたんだ。
笹森さんの言っていたことの意味が理解出来た気がした。

言葉って、ある意味怖いんだなぁ。

そう思いながら、俺は自分の仕事に戻った。

あとから知った話なのだが、岩井さんには2ヶ月間の給料を大幅にカットされるという処分が下されたということだった。