最期の言霊
そのあと、「じゃあね!」と手を振り、歩いて帰って行く笹森さんの後ろ姿を俺はしばらく見つめていた。
すると笹森さんは、水溜りで横断歩道をなかなか渡れず困っているおばあさんに気付き、手助けして一緒に横断歩道を渡ってあげていた。
笹森さんらしいなぁ。
笹森さんを見ていると、一緒にいると、ほっこりする自分がいる。
彼女の不思議な魅力に、俺はすっかり虜になってしまっていた。
梅雨が明けると、俺はまた笹森さんを「一緒に出掛けない?」と誘った。
笹森さんは「また神社に連れて行ってくれる?」と首を傾げて言った。
「もちろん!」
「じゃあ、行く!」
「あれ、、、ってことは、神社はダメって言ったら、行かなかった?」
俺が不安そうにそう言うと、「ううん、神社じゃなくてもオーケーしてたよ!」と笹森さんは悪戯に笑って見せた。
クソォ、やられた、可愛い、、、
俺たちは、次の土曜日に、前回とは違う神社に行く約束を交わした。
梅雨時期は雨ばかりで神社に行けないと思っていたので、俺は出掛ける誘いを控えていたのだが、どうやら笹森さんは雨の中でも一人で神社巡りをしていたらしい。
そっか、笹森さんは雨が好きなんだった!
雨でも関係なく、誘っておくべきだったと、後悔する自分がいた。