最期の言霊

この日も盛り上げ役は、やはり伸也とヒカリ。
俺と笹森さんは、そんな二人の話を聞いて笑っていた。

「伸也なんてさ、虫嫌いだから家でゴキブリ出たら大騒ぎなんだよ〜!」
「だって、あいつらデカくて気持ち悪いじゃん!」
「そうだけどさ〜、そこは男らしく伸也が退治してくれても良くない?!いつもわたしがやっつけてるんだよ!」

そう言いながら、スリッパを片手にゴキブリを退治する真似をするヒカリ。
それを見て、笹森さんは笑っていた。

「なぁ、お前は仲間だよなぁ!隼人ぉ!お前も虫嫌いだろ?!ゴキブリ退治できるか?!」

そう言って、俺を仲間にしようとしてくる伸也は、俺の肩に手を置いた。

俺は笹森さんの反応が気になり、ふと笹森さんの方に視線を移した。
笹森さんは、俺が何て言うのか待っているように見えた。

笹森さんの前で「ゴキブリ退治できない!」なんて、言えない!

すると、俺がどう答えようか迷っていると、俺よりも先に笹森さんが「わたしゴキブリ平気だよ。」と答えたのだ。

伸也は笹森の言葉に「えー!!!マジぃ?!」と驚いていた。

「だって、ゴキブリだって一生懸命生きてるでしょ?家の中に居たら、外に逃がすかなぁ。」

笹森さんがそう言うと、ヒカリも「凄っ!」と驚いていたが、俺は笹森さんらしい答えだなぁと思った。

まだ入社したてで出会ったばかりの時に話したとき「全部好き!」と言っているのを覚えていたからだ。

伸也は笹森さんに向けて頭を下げると「尊敬します!」と言い、みんなを笑わせていた。
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