最期の言霊

「あ、そういえばね、これを渡しに来たの。」

笹森さんはそう言うと、俺たちに一枚ずつ紙を渡してきた。
その紙の一番上には「健康診断の日程」と書かれていた。

「うわぁ〜、もう健康診断の時期かよ。」
伸也が嫌そうな表情をして言った。

「俺、バリウム苦手なんだよなぁ。」
俺がそう言うと、伸也が「俺も俺も!」と言う。

すると、笹森さんが「正社員さんはバリウムもあるんだもんね。わたしは契約社員だから、身体測定と診察と採血くらいしか無いんだぁ。」と言った。

「そっか、楓ちゃん契約社員だから、簡単な検査しかないんだ!バリウムないの羨ましいよ〜。」
そう言いながら、伸也が肩を落とした。

そして、その紙を貰ってから1ヵ月後、俺たちは毎年恒例の健康診断を受けたのだった。


健康診断から約2週間後。
検査結果の封筒が配られた。

俺は、まあ、いつも通りだろうなぁ〜と軽い気持ちで封筒を開き、中の検査結果の紙を開いた。

すると、そこには赤字で「精密検査あり」と書かれていたのだ。
初めてのことで俺は驚きのあまり声が出なかった。

隣からは、伸也が「結果どうだった?」と訊いてきたが、俺は平然を装い「大丈夫だったよ。」と答えたのだった。

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