最期の言霊

この俺が胃がん?しかも、ステージ4?

大きな自覚症状がなかっただけに、信じられず涙も出なかった。

「スキルス胃がんは進行が早いのとステージ4で転移もあるので、申し上げにくいんですが、桜が見れるまで生きれるかどうか、、、。ここまでくると、効果があるかは分かりませんが、抗がん剤は試してみますか?」

桜が見られるまで行きられるか分からない?
それって、余命宣告ってことだよなぁ?
俺はあと、半年くらいしか行きられないってことなのか?
いや、病院の先生ってのは、本当の余命よりも永く言っているかもしれない。

俺は先生の話についていけず、言葉が出てこない。

すると、笹森さんが「抗がん剤を使うかについては、少し時間を頂いていいですか?」と俺の代わりに言ってくれた。

「わかりました。では、入院は早い方がいいので、今から看護士が病室にご案内しますね。」

鎌田先生がそう言うと、待機していた看護士さんが「こちらへどうぞ。」と案内してくれた。

魂が抜けた状態のようになってる俺の手を笹森さんはギュッと握ってくれた。

病室に案内されると、そこは個室だった。
看護士さんが何かを説明していたが、俺の耳には何も入ってこない。

そして、看護士さんが病室から出ていくと、俺はベッドにゆっくりと腰をかけた。

「俺、、、胃がんだって。死ぬんだって、、、」

初めて自分の口から死への恐怖を言葉に出した途端、涙が溢れてきて、止まらなかった。
そして、声に出して泣く俺を笹森さんは抱き締めてくれた。

何だよ、俺が笹森さんが悲しいときに抱き締めてあげたかったのに、逆じゃんかよ。

俺はしばらくの間、笹森さんに抱き締められながら、子どものように泣き続けた。

< 26 / 37 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop