最期の言霊

「何が心配かけたくなくて、だよ。心配させろよ!俺たち、今まで楽しさを分け合ってきただろ?!悲しみも心の痛みも分けさせろよ!」

伸也はそう言うと、ガッと強く俺を抱き締め、泣いていた。

「ごめん、、、伸也、俺、、、。」
俺が謝ると、「もう謝るな!」と伸也は言った。

そんな俺たちを見て、ヒカリも笹森さんも泣いていた。

俺は、何て良い友達を、仲間を持ったんだろう。

伸也がこんなに泣くのを俺は初めて見たのだった。



11月も終わり、12月に入った。
もうすっかり冬の寒さになっていた。

俺は、力の入らない足で点滴の台を押しながら、廊下をゆっくり散歩していた。

すると、ナースステーションの方から賑やかな声が聞こえてきた。
ナースステーションの方に行ってみると、ナースステーション前のちょっとしたスペースに看護士さんが患者さんやその家族と一緒にクリスマスツリーを飾っているところだった。

もうそんな時期なのかぁ、、、

俺も普通にクリスマス、楽しみたかったなぁ。
本当だったら、笹森さんとクリスマスデートなんてしてみたいと夢をみていたのだ。

俺は少し切ない気持ちになりながら、またゆっくり病室へと引き返して行った。

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