最期の言霊


「あ、ありがとうございました。」

笹森さんは頭を下げながら、俺に向かってそう言った。

「いやいや、俺、笹森さんがちゃんと岩井さんに確認取ってるの見たからさ。笹森さんのミスにされてて、何か腹立っちゃって。」

俺はそう言うと、照れくささからヘヘッと笑って見せた。

こんなに近くで笹森さんを見たのは初めてだったが、その可愛さに少し照れている自分がいた。

「部署は違うけど、何かあったら相談乗るからね。」
「はい、ありがとうございます。」

これが、笹森さんとの初めての会話だった。

そのあと「お前カッコ良かったぞ!」と伸也から褒められ、ヒカリにも「隼人、やるじゃ〜ん!」とおだてられた。

褒められることに慣れてない俺は「だって、ハゲ課長が頼りにならないから。」と照れ隠しをしたが、自分でも自分を褒めてやりたいくらいの気持ちだった。


その日の帰り、俺は伸也とヒカリと3人で会社近くの焼鳥屋に行く約束をしていた。

定時になり、「さぁ、さっさと帰ろう!焼鳥焼鳥!」とテンション高く伸也は言った。

すると、同じタイミングで笹森さんも帰ろうとしていて、それを見たヒカリが「笹森さんも誘う?まだ歓迎会してなくない?」と言い出した。

「そうだな!おい、隼人。笹森さん、誘ってこいよ!」
そう言う伸也に「俺が?!」と言うと、「笹森さんと話したことあるの、お前だけだろ?ほら!」と伸也に背中を押された。

女性を誘うことになれていない俺は、恥ずかしさでいっぱいだったが、思い切って笹森さんに声を掛けることにした。

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