最期の言霊

「さぁ、出発しますか!笹森さん、行きたい神社とかあるの?」

俺がそう言うと、笹森さんは「ちょっと遠いんだけど、いい?」と遠慮がちに言った。

「いいよ!どこの神社?住所とか分かる?」
「えっとぉ、、、ここなんだけど。」

そう言って、笹森さんは俺に自分のスマホの画面を見せた。

そこには、緑豊かな自然の中にあるような神社の写真が載っており、俺はその下に書かれていた住所を車のナビに入力した。

どうやら、本当に遠いらしく、到着までに2時間はかかりそうな場所にあるらしい。

そして、発進した神社へ向かう途中の車内の雰囲気は穏やかだった。

初めての二人きりでのお出掛けで、何を話そうか、無言になったらどうしようなど、不安と緊張でいっぱいだったのだが、その不安や緊張は必要なかったくらいだった。

笹森さんと一緒に居ると、正直恥ずかしさから緊張はするのだが、彼女が放っている優しい雰囲気と、あとは不思議と安心感があり、肩の力を抜くことが出来ていたのだ。

「笹森さんは、今から行く神社には行ったことあるの?」

俺がそう訊くと、笹森さんは「うん、一度だけ。凄く居心地の良い神社だったから、また行きたいと思ってたんだけど、遠いからなかなか行ける機会がなくて。」と言った。

俺は「そうだったんだぁ。」と言いながら、一度行ったことがある?誰に連れて行ってもらったんだ?男か?など、嫉妬している自分がいた。

そうこう話していると2時間なんてあっという間で、目的地の神社に到着した。

そこは、こう言うと失礼かもしれないが、ド田舎にある写真に載っていたとおり緑に囲まれた小さな神社だった。

< 9 / 37 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop