『世界一の物語』 ~夢犬・フランソワの大冒険~
 彼女の両脇には二人のミュージシャンが立っていた。
 一人はトランペットを、もう一人はサックスを持っていた。
 リック・ブラウンとボニー・ジェイムスだった。
 コンテンポラリー・ジャズ界を牽引(けんいん)する世界最高レベルのミュージシャン二人。
 
 フランソワが息を呑んで見つめる中、玉留の合図で演奏が始まった。
 あっ、この曲、
 フロリダの別荘で聞いた『シェイク・イット・アップ』だった。

 振って揺られて刺激を受けろ!

 気分が爽快になってきた。
 観客全員も体を揺すっている。

 シェイク、シェイク! もっと体を揺らそうぜ。
 シェイク、シェイク! 脳と細胞に刺激を与えようぜ。
 シェイク、シェイク! このノリ最高。
 シェイク、シェイク! 振って揺られて刺激を受けろ!

 フランソワはノリに乗って踊っていたが、二人のミュージシャンが目を合わせたのに気がついた。
 あっ、残念、エンディングだ。
 と思った時、二人が同時に飛び上がって着地した。
 ジャン♪
 決まったぜ!
 その瞬間、明かりが消えて玉留とリック・ブラウンにスポットライトが当たった。


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