『世界一の物語』 ~夢犬・フランソワの大冒険~
「次にご紹介するゲストは、」
 指差した先の大きなスクリーンに、デフォルメされた顔のイラストが映し出された。
 最初はマッシュルームカットだった。
 それが真ん中分けの長髪に変化した。
 そして、短い髪になると同時に独特な丸いメガネが強調された。
 その瞬間、悲鳴に似た歓声が上がった。
 誰もが知っている偉大なミュージシャンに違いなかった。
「ジョン!」
 ポールが呼びかけると、イラストが実写に変わった。
 ジョン・レノンだった。
 間違いなく本物だった。
 会場は興奮のるつぼになった。
 それを静めてポールが話し出した。
「彼はシャイだから会場には来てくれなかったんだけど、リモートならOKだよって言ってくれたんだ」
 すると、ジョンが口を開いた。
「ヤァ」
 その一言だけで会場が揺れた。
 あの口調だった。
 はにかんだようなあの声だった。
「歌ってくれるかい?」
 ポールの問いかけにジョンは頷き、ピアノを弾きながらあの名曲を歌い出した。
『イマジン』
 大合唱になった。
 それが全世界に広がった。
 地球全体が大合唱に包まれるのに時間はかからなかった。
 
 
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