『世界一の物語』 ~夢犬・フランソワの大冒険~
 その夜、玉留にお休みのキスをして書斎にこもったフランソワは、今日までのことを思い返した。
 最初は露見呂嗚流だった。
 彼に直接教えてもらったのは、
『成功するまで諦めない』
『独自性を磨く』
『流行を追わない』
『内面と真摯に向き合う』
 だったし、椙子様を通して、
『強く思えば必ず伝わる』
『歌は武器よりも強し』
 ということを教わった。

 自分を夫に選んでくれた是仁久留玉留にも多くのことを教わった。
『1円の収入増、1円の支出減、1秒のスピードアップ!』
『お金がお金を生む』
『選択と集中』
『厚利少売』
『レピュテーション・マーケティング』
『評判は信用になり、信用は崇拝になる』
『新規客→固定客→ファン』
『彼を知り己を知れば百戦危うからず』
『好きこそ物の上手なれ』
『株主総会に積極的に出席して社長の経営力や人物像を評価』
『ポートフォリオによる分散投資』
『独自性重視企業の発掘』

 それから、富裸豚覇王に教えてもらったのは、
『独自技術』
『赤字は悪』
『リーダーの務めは国民や社員を幸せにすること』
『国民の将来不安を取り除く』
『三方よし!』
『積極的に正しいことをする』
 だった。
 そして、『組織はリーダーで決まる』と気づかせてくれた。

 もちろん椙子様からも教わった。
『愛、平和、未来』という素晴らしいコンセプトを。
 それだけでなく、『愛が平和を創り、平和が未来を創る♪』という歌詞と歌に感動した。

 更に、偉大なミュージシャンからも多くのことを学ばせてもらった。
『愛が大事なんだ。愛こそがすべてなんだ。愛があれば人種差別なんて起こらないんだ。愛があれば戦争なんて起こらないんだ。愛があれば平和が続くんだ。平和が続けば明るい未来が開けるんだ!』と語ったのは、マイルス・デイヴィスだった。

 ジョン・レノンからは、『国のために殺し合う必要はないんだ。違う国を敵だと思う必要はないんだ。みんな同じ地球人なんだから』『想像してごらん。そして心の声を聞いてごらん。そうすれば何が正しいか何が間違っているかわかるから。いいね、想像してごらん。心の声を聞いてごらん』と教わり、♪ imagine all the people sharing all the world ♪とポール・マッカートニーが歌ってくれた。
 
 そして、マイケル・ジャクソンには、『愛なき世界、平和なき世界、未来なき世界、それはゾンビの世界だ。みんなはゾンビになりたいのか!』と警告された。
 
 どれも至言と言えるものばかりだった。
 確かに、これを胸の内だけにとどめておくのはもったいない。
 彼の言う通りだ。
 一人でも多くの人と分かち合わなければならない。
 そして一つでも多く学んでもらって、より良い世界の実現を目指してもらいたい。
 それが僕の義務なんだ。

 でも、

 そこで疑問が湧いてきた。
 このくらいで満足していいのだろうかと。
 すべてを知ったわけではないのだ。
 確かにすごい経験はしたが、それで全部ではないのだ。
 まだまだ知らないことがいっぱいあるはずなのだ。
 そう気づくと、居ても立ってもいられなくなった。
 まだ落ち着くわけにはいかなかった。
 未知の世界が待っているのだ。
 
 行かなくては!

 もう自分を止めることはできなかった。
「長い旅に出ることを妻に伝えてください」
 秘書に告げて、愛の巣から旅立った。
 
 
 
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