👧 ドリームドッグ 🐶  ~フランソワの大冒険~
 窓の傍に立った呂嗚流は、雲海を見つめながら、しばし考えた。
〈この犬に成功の秘訣を伝授する意味があるのだろうか〉と。
 勿論、ただの犬ではないことはわかっている。
 それに、世界一の美女の愛犬であることもわかっている。
 とはいえ、犬であることに変わりはない。
 秘訣を教えても実践できるはずはないのだ。
 やはり意味はない。
 そう結論付けた時、機体が揺れて、エアポケットに入ったかのようにストンと落ちた。
 すると、あの時の姿が思い出された。
 顎が外れて腰が抜けたみっともない姿だった。
 もしあのままの状態が続けば人前に出ることはできず、歌だって歌えなかったはずだ。
 それをこの犬が救ってくれた。
 頭にコブはできたが、外れた顎は元に戻った。
 こうしてHONDAジェット・エリートで日本へ向かえるのもこの犬のおかげなのだ。
 偶然の出来事だったとはいえ、恩を受けたまま礼を失するわけにはいかない。
 それは俺の流儀に反する。
 心を決めた呂嗚流は、すぐさま振り向いてフランソワに目を向けた。
 
 
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