『世界一の物語』 ~夢犬・フランソワの大冒険~
 フランソワを乗せたペルシャ絨毯は北へ南へと蛇行しながら太平洋を東へ東へと進んでいき、ハワイ上空に達した。

 確か、手前がカウアイ島で、次がホノルルがあるオアフ島で……、
 おっ、ダイヤモンドヘッドが見えてきたぞ。
 ワイキキビーチも賑わっているようだ。
 水着美女は見えるかな? 
 無理か、ちょっと遠すぎる。
 では、ハワイを統一したカメハメハ大王の像は……やっぱり見えない。
 と思っているうちにモロカイ島とラナイ島とマウイ島を過ぎてハワイ島の上空に差し掛かった。

 確かボルケーノがあったはずだよな~、と探していると、噴煙が見えてきた。
 間違いなくキラウエア火山のようだった。
 世界で最も活動が活発で、過去30年間に50回以上も噴火している危険な山。
 あそこに落ちたら丸焼けだ、
 クワバラ、クワバラ、
 フランソワは肉球を合わせて通り過ぎるのを待った。
 
 その願いが通じたようで難なく通過し、その後は偏西風に乗って快適に東進した。
 おっ、何か見えたぞ。
 アメリカ大陸に違いなかった。
 海岸線が南北に長く続いている。
 もしかしてロサンゼルスか?
 そうだった。
 ハリウッドがあり、ビバリーヒルズがあり、大谷が移籍したドジャー・スタジアムがあるロサンゼルスだった。
 おっ、あれはディズニーランドか?
 そうだった。
 椙子様が両親と毎年行っている本家本元の夢の公園に違いなかった。
 一度行ってみたかったんだよ、ここに。
 いつも軽子と留守番をさせられて腐っていたが、こんな形で実現できるとは思いもしなかった。
 お~い、ミッキー、ミニー、
 嬉しくなって思い切り手を振ったが、その思いが届くはずはなく、あっという間に通り過ぎてラスベガス上空に差し掛かった。
 するとスロットの音が聞こえて、金のニオイがした。
 スッテンテンにならないでね、
 ギャンブラーたちの幸運を願っていると、左目の端に高い山が見えたような気がした。
 すぐに顔を向けると、険しい山々が見えた。
 ロッキー山脈だ!
 その雄大な姿に見とれたが、それも束の間、大峡谷(だいきょうこく)の上空に差し掛かった。
 グランド・キャニオンだった。
 次から次へと名所に出くわすので、興奮が収まることはなかった。
 
 
 
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