『世界一の物語』 ~夢犬・フランソワの大冒険~
 それにしても見どころ満載だな~、
 思わず頬が緩んだが、急に風が強くなり、一気にテキサスを過ぎてニューオーリンズの上空に差し掛かった。
 ん? 
 なんか聞こえるぞ、
 もしかして、デキシーランドジャズか?
 耳を澄ませていると、トロンボーンやクラリネットの音が聞こえたような気がしたが、それもあっという間に聞こえなくなり、前方に大きな半島が見えてきた。
 フロリダのようだった。
 南に見えるのはカリブ海だろうか? 
 ということは、このまま大西洋を渡るのか? 
 と思った途端、突然風が止まった。
 えっ? 
 ウソでしょう? 
 やめてよ!
 しかし、嘘ではなかったし、やめてもくれなかった。
 ペルシャ絨毯ごと急激に落下し始めた。
 その時、脳裏に何故かバンジージャンプが思い浮かんだが、命綱があるはずもなく、落下スピードは速さを増していた。
 明らかに命の危険に直面していた。
 
 なんとかしなくては!
 両足の肉球を合わせてひたすら祈った。
 しかし、祈りは通じなかった。
 地面が物凄い勢いで近づいてきた。
 もうダメだ! 
 ぶつかる! 
 観念して目を瞑った時、何かにぶつかった。
 ぶつかったが、落下の衝撃が何故か吸収されていた。
 それだけではなかった。
 逆に空中に放り上げられていた。
 えっ? 
 なんだ? 
 どうなっているんだ?
 目を見開くと、信じられないものが見えた。
 これは……、
 トランポリンだった。
 それも、見たこともないような大きなトランポリンだった。
 
 
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