『世界一の物語』 ~夢犬・フランソワの大冒険~
世界一の大富豪
~ 第二幕:是仁久留玉留 ~
「鏡よ鏡、この世で最も裕福な人を教えておくれ」
鏡は答えた。
「玉留様、この世で最も裕福な人は、あなた様です」
当然よね、
世界一の大富豪、是仁久留玉留がフロリダの広大な別荘でいつものように頷いた。
しかし、退屈だわ~、
毎日同じ答えを聞くことに飽きてもいた。
それにちょっと体が重い気がした。
運動しなくっちゃ、
立ち上がり、背伸びをしてつま先立ちをし、垂直に飛び上がるような動作を何度も繰り返した。
飛び上がった瞬間の姿勢は手の先から足の先まで一直線になっていた。
完璧だわ!
玉留は独り言ちた。
さあ、今日も最高のジャンプをするわよ、
また独り言ちたあと、レオタードに着替えて庭に出た。
初夏の爽やかな風が頬を撫でると、開放感に包まれた。
しかし、それは長くは続かなかった。
トランポリンの上にペルシャ絨毯が乗り、その上に小さな犬が座っていたからだ。
「あなたは誰? ここで何をしているの?」
するとキョトンとして座っていた犬が徐に口を開いた。
「僕は偏西風に乗って日本からやってまいりました。名犬フランソワと申します」
犬語が……、
驚きの余り左手で口を押えると、グ~っという音が聞こえた。
しかしそれは自分のお腹からではなかった。
「何か食べ物を……」
言い終わらないうちに犬が白目を剥いた。
そして崩れるように絨毯の上に落ちた。
「どうしたの!」
慌てて体を揺さぶったが、反応はなかった。
低血糖に違いないと思った玉留は、すぐに抱きかかえて家の中に運び込んだ。
「鏡よ鏡、この世で最も裕福な人を教えておくれ」
鏡は答えた。
「玉留様、この世で最も裕福な人は、あなた様です」
当然よね、
世界一の大富豪、是仁久留玉留がフロリダの広大な別荘でいつものように頷いた。
しかし、退屈だわ~、
毎日同じ答えを聞くことに飽きてもいた。
それにちょっと体が重い気がした。
運動しなくっちゃ、
立ち上がり、背伸びをしてつま先立ちをし、垂直に飛び上がるような動作を何度も繰り返した。
飛び上がった瞬間の姿勢は手の先から足の先まで一直線になっていた。
完璧だわ!
玉留は独り言ちた。
さあ、今日も最高のジャンプをするわよ、
また独り言ちたあと、レオタードに着替えて庭に出た。
初夏の爽やかな風が頬を撫でると、開放感に包まれた。
しかし、それは長くは続かなかった。
トランポリンの上にペルシャ絨毯が乗り、その上に小さな犬が座っていたからだ。
「あなたは誰? ここで何をしているの?」
するとキョトンとして座っていた犬が徐に口を開いた。
「僕は偏西風に乗って日本からやってまいりました。名犬フランソワと申します」
犬語が……、
驚きの余り左手で口を押えると、グ~っという音が聞こえた。
しかしそれは自分のお腹からではなかった。
「何か食べ物を……」
言い終わらないうちに犬が白目を剥いた。
そして崩れるように絨毯の上に落ちた。
「どうしたの!」
慌てて体を揺さぶったが、反応はなかった。
低血糖に違いないと思った玉留は、すぐに抱きかかえて家の中に運び込んだ。