『世界一の物語』 ~夢犬・フランソワの大冒険~
黒い帽子をかぶった丸顔の男が現れた。
舳先に立ち、厳しい目で彼方を睨んでいた。
目の前には海以外何もなかったが、頭の中には未知なる大陸の姿がはっきりと描かれていた。
ポルトガルのパロス港を出発した男はカナリア諸島で物資の補給と船の修理を終え、今まさに出帆の時を迎えようとしていた。
船員が男の名前を呼んだ。
「コロンブス様」
男は頷き、指示を出した。
船が動き出すと、若かった頃のことを思い出した。
家業である絹織物業を手伝って地中海を東奔西走したことや、海賊に襲われて命からがら逃げだしたことなどが鮮明に浮かんできた。
楽しいことより辛いことや怖いことの方が多かったが、それはすべて血となり肉となった。
今の自分に繋がっているのだ。
それに、マルコ・ポーロの『旅行記』や宇宙に関する書物から知識を得たことも大きかった。
大航海への不安を取り除いてくれたからだ。
そのお陰で今日の日を迎えることができた。
この日のことは絶対に忘れないだろう。
1492年8月3日のことを生涯忘れることはない。
歴史に名を遺す旅が始まる日なのだ。
忘れるわけがない。
男はまだ見ぬ憧れの地に向かって強い視線を送った。
舳先に立ち、厳しい目で彼方を睨んでいた。
目の前には海以外何もなかったが、頭の中には未知なる大陸の姿がはっきりと描かれていた。
ポルトガルのパロス港を出発した男はカナリア諸島で物資の補給と船の修理を終え、今まさに出帆の時を迎えようとしていた。
船員が男の名前を呼んだ。
「コロンブス様」
男は頷き、指示を出した。
船が動き出すと、若かった頃のことを思い出した。
家業である絹織物業を手伝って地中海を東奔西走したことや、海賊に襲われて命からがら逃げだしたことなどが鮮明に浮かんできた。
楽しいことより辛いことや怖いことの方が多かったが、それはすべて血となり肉となった。
今の自分に繋がっているのだ。
それに、マルコ・ポーロの『旅行記』や宇宙に関する書物から知識を得たことも大きかった。
大航海への不安を取り除いてくれたからだ。
そのお陰で今日の日を迎えることができた。
この日のことは絶対に忘れないだろう。
1492年8月3日のことを生涯忘れることはない。
歴史に名を遺す旅が始まる日なのだ。
忘れるわけがない。
男はまだ見ぬ憧れの地に向かって強い視線を送った。