『世界一の物語』 ~夢犬・フランソワの大冒険~
「そんなことがあったんだ……」
 椙子の不思議な体験に驚きながらも、呂嗚流は嬉しそうに頷いた。
「愛、平和、未来。素晴らしい答えを見つけたね」
 腕枕に頭を乗せた椙子の髪を撫でながら、頬にキスをした。
 椙子は幸せ過ぎて失神しそうになった。
「あなたのお陰よ。あなたが導いてくれたの」
 椙子は感謝の塊になった。
「そんなことないよ。内面と真摯に向き合い続けたから、そして、諦めなかったから、君を導く神が現れてくれたんだよ」
 呂嗚流の優しさに気絶しそうだった。
 もう一時も離れたくない、ずっと一緒にいたい、と椙子は強く願った。
 そんな気持ちを察したかのように、呂嗚流が優しく囁いた。
「君と僕とで作った曲をスタジオで録音しようか」
「えっ、本当?」
「本当だとも。モルディブにプライベートなレコーディングスタジオを持っているから、休暇を兼ねて行こうと思うんだけど、どうかな」
 椙子に異論があるはずがなかった。
「ハネムーンみたい……」
「そうだね。そこで結婚式を挙げようか」
 えっ! 
 け・っ・こ・ん・し・き、
 余りの驚きに息を吸い込むことを忘れそうになった。
 慌てて吸い込んだが、大変なことに気がついた。
 まだ両親に紹介していないのだ。
 今は地中海クルーズを楽しんでいるはずで、陸に戻ってくるのは1か月以上先になる。
 どうしよう……、
 椙子の顔に戸惑いが現れた瞬間、いきなり場面が変わって、一女と一犬が映し出された。
 心配そうな女の声が聞こえてきた。
 
 
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