『世界一の物語』 ~夢犬・フランソワの大冒険~
 ん? 
 聞いたことないかも、
 フランソワは目に気合を入れて聞く態勢に戻った。
「色々な意味があるけど、投資家の間では『分散投資』という意味で使われているの」
 投資を分散する?
「偏った投資はリスクが高くなるの。当たればいいけど、外れた時は大きな痛手を被ることになるの。そうならないようにリスクを分散するのがポートフォリオなの」
 ん~、わかったような、わからないような……、
「一つの会社や一つの業界だけに投資していると、悪い流れになった時にそれを止める手段が無いでしょう。でもね、複数の会社、複数の業界に投資していると、業績の良い会社や業界がカバーしてくれるの。悪い流れが来ても被害が小さくなるのよ」
 なるほど。
「あたしはね、色々試行錯誤した結果、『玉留の法則』を編み出したの」
 なんだそれ?
「これは誰にも言っていないことだから秘密にしてね」
 わかった。
「投資資金の50パーセントを大幅な増収増益を続けている好業績企業に、残りの50パーセントをAIやロボット、バイオなどの将来有望なベンチャー企業に投資するのが『玉留の法則』よ。別名『貯まるの法則』とも呼んでいるけど」
 ダジャレかい!
「好業績企業株で着実に配当と売却益を得ながら、有望ベンチャー株の大幅値上がりを待つ。そして、リーマンショックやブレグジットショックなどの大幅下落時に割安になった優良株を大量に仕込む。これがあたしのやり方なの」
 そこで不敵な笑みを浮かべた玉留は、「普通の人は株が上がり出したら買って、下がり始めると慌てて売るパターンが多いけど、あたしはその逆。人が売っている時に買って、買っている時に売るの。逆張りね」と自慢げに言った。


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