『世界一の物語』 ~夢犬・フランソワの大冒険~
ふ~ん。
でも株が下がっている時に買ったら損が拡大するじゃん。
「一時的にはね。でもね、平均購買単価を下げるという効果があるの。例えば、1,000円で買った株が500円に下がった時に買い増したら、平均購買単価は750円になるでしょう。そうやって平均購買単価を下げていったら値上がりした時の利益が大きくなるのよ」
ん~、理論的にはそうかもしれないけど……、
「勿論、どれでもいいっていうわけじゃないわよ。それをする価値がある会社かどうかの見極めが必要なの」
それだよそれ、僕が訊きたかったのは。
「独自の技術を持っている会社、その技術を使って革新的な製品やサービスを開発している会社、その製品やサービスによって人々の生活を豊かにしようとしている会社、その三点が見極める時の基準よ」
なるほど。
でも、どっかで同じようなことを聞いたような気がするな。
どこだっけ?
ん~と……、
そうだ、思い出した。
呂嗚流から聞いたんだ、HONDAジェットの中で。
彼は独自性を磨くことが重要だと言っていた。
「他社にはない技術を持った会社が成長を始めると、一気に注目が集まって投資家が買いに走り株価が暴騰するの。10倍以上になることも珍しくないのよ」
えっ、10倍?
「それだけじゃないの。株価が暴騰すると株式分割をすることが多いの。1株を2株に分割することが一般的だけど、中には1株を5株や10株に分割する会社もあるのよ。持株が一気に5倍とか10倍になるの。勿論その時には株価も五分の一や十分の一に下がるけど、しばらくすると、ほとんどの場合、また株価がどんどん上がっていくわ。だって独自性を持つ有望企業だから投資家が放っておかないのよ」
なるほど。
「株式分割した会社の株価が分割前の株価に戻った時に売って、あたしは大きな利益を手にし続けてきたの。その積み重ねで今の資産を築いてきたのよ」
なるほど、なるほど。
「お金がお金を生むっていうことはこういうことなの。あたしは投資しただけ。素晴らしい経営者や研究者、技術者がいる会社に投資しただけ。その経営者や研究者、技術者が企業価値を高めて、それが株主価値の向上につながって、株主であるあたしの資産を増やしてくれたの。あたしは経営も執行も何もしていない。投資しただけなの」
なんか、少しわかってきたぞ。
忘れないようにしっかり覚えなくっちゃ。
フランソワは機内で聞いたことを整理して己の海馬に叩き込んだ。
① 彼を知り己を知れば百戦危うからず
② 好きこそ物の上手なれ
③ 株主総会に積極的に出席して社長の経営力や人物像を評価
④ ポートフォリオによる分散投資
⑤ 独自性重視企業の発掘
ん?
ちょっと待てよ、
犬でも株が買えるのかな?
株主総会に行けるのかな?
フランソワが首を傾げた時、飛行機が降下を始めた。
もうすぐ成田空港に隣接する玉留のプライベート飛行場に到着するのだ。
頭を切り替えたフランソワは窓に顔を寄せたが、どんよりとした灰色の雲しか見えなかった。
それを見ていると、なんだか嫌な予感がして振り払おうとしたが、纏わりついて離れなかった。
いや、離れないどころか、どんどん膨らんでいった。
なにがあるんだ?
不安になって玉留に助けを求めようとした時、突然、飛行機がガタガタと揺れ始めた。
やめてくれよ~、
心細くなって声を出したが、揺れが止まることはなかった。
それに耐えながら降下していく中で、得体の知れない不安に襲われたフランソワは、怖くなって目を開けていられなくなった。
すると、何故か瞼の裏に軽子の顔が浮かんできた。
しかも、その顔にはむき出しの敵意が表れていた。
でも株が下がっている時に買ったら損が拡大するじゃん。
「一時的にはね。でもね、平均購買単価を下げるという効果があるの。例えば、1,000円で買った株が500円に下がった時に買い増したら、平均購買単価は750円になるでしょう。そうやって平均購買単価を下げていったら値上がりした時の利益が大きくなるのよ」
ん~、理論的にはそうかもしれないけど……、
「勿論、どれでもいいっていうわけじゃないわよ。それをする価値がある会社かどうかの見極めが必要なの」
それだよそれ、僕が訊きたかったのは。
「独自の技術を持っている会社、その技術を使って革新的な製品やサービスを開発している会社、その製品やサービスによって人々の生活を豊かにしようとしている会社、その三点が見極める時の基準よ」
なるほど。
でも、どっかで同じようなことを聞いたような気がするな。
どこだっけ?
ん~と……、
そうだ、思い出した。
呂嗚流から聞いたんだ、HONDAジェットの中で。
彼は独自性を磨くことが重要だと言っていた。
「他社にはない技術を持った会社が成長を始めると、一気に注目が集まって投資家が買いに走り株価が暴騰するの。10倍以上になることも珍しくないのよ」
えっ、10倍?
「それだけじゃないの。株価が暴騰すると株式分割をすることが多いの。1株を2株に分割することが一般的だけど、中には1株を5株や10株に分割する会社もあるのよ。持株が一気に5倍とか10倍になるの。勿論その時には株価も五分の一や十分の一に下がるけど、しばらくすると、ほとんどの場合、また株価がどんどん上がっていくわ。だって独自性を持つ有望企業だから投資家が放っておかないのよ」
なるほど。
「株式分割した会社の株価が分割前の株価に戻った時に売って、あたしは大きな利益を手にし続けてきたの。その積み重ねで今の資産を築いてきたのよ」
なるほど、なるほど。
「お金がお金を生むっていうことはこういうことなの。あたしは投資しただけ。素晴らしい経営者や研究者、技術者がいる会社に投資しただけ。その経営者や研究者、技術者が企業価値を高めて、それが株主価値の向上につながって、株主であるあたしの資産を増やしてくれたの。あたしは経営も執行も何もしていない。投資しただけなの」
なんか、少しわかってきたぞ。
忘れないようにしっかり覚えなくっちゃ。
フランソワは機内で聞いたことを整理して己の海馬に叩き込んだ。
① 彼を知り己を知れば百戦危うからず
② 好きこそ物の上手なれ
③ 株主総会に積極的に出席して社長の経営力や人物像を評価
④ ポートフォリオによる分散投資
⑤ 独自性重視企業の発掘
ん?
ちょっと待てよ、
犬でも株が買えるのかな?
株主総会に行けるのかな?
フランソワが首を傾げた時、飛行機が降下を始めた。
もうすぐ成田空港に隣接する玉留のプライベート飛行場に到着するのだ。
頭を切り替えたフランソワは窓に顔を寄せたが、どんよりとした灰色の雲しか見えなかった。
それを見ていると、なんだか嫌な予感がして振り払おうとしたが、纏わりついて離れなかった。
いや、離れないどころか、どんどん膨らんでいった。
なにがあるんだ?
不安になって玉留に助けを求めようとした時、突然、飛行機がガタガタと揺れ始めた。
やめてくれよ~、
心細くなって声を出したが、揺れが止まることはなかった。
それに耐えながら降下していく中で、得体の知れない不安に襲われたフランソワは、怖くなって目を開けていられなくなった。
すると、何故か瞼の裏に軽子の顔が浮かんできた。
しかも、その顔にはむき出しの敵意が表れていた。