『世界一の物語』 ~夢犬・フランソワの大冒険~
その頃、正気に戻った玉留が飛び起きた。
「ここはどこ?」
「美家のゲストルームでございます」
秘書の声だった。
見ると、ほっとしたような表情を浮かべていた。
「そうだったわね。椙子さんに会いに来たのだったわね。でも」
玉留の表情が一気に暗くなった。
椙子が呂嗚流とハネムーンに行ったことを思い出したからだ。
それでも、なんとか気分を立て直そうと無理矢理笑みを浮かべたが、何かがおかしいことに気がついた。
この部屋に何かが欠けているように思えたのだ。
ハッとして周りを見回したが、探しているものを捉えることはできなかった。
「フランソワは?」
秘書は眉間に皺を寄せて力なく首を振った。
「えっ、何かあったの?」
秘書は何も答えず、横に立つ軽子に顔を向けた。
軽子は薄気味悪い笑みを浮かべていた。
「軽子さん、フランソワはどこにいるの?」
つかみかかるように問い詰めると、軽子がシラッと言い放った。
「渦と共に去りました」
「渦? 渦って何?」
意味がわからない玉留は混乱して気が動転したが、軽子は玉留の動揺をまったく気にしていないかのように淡々と答えた。
「椙子様と呂嗚流様のご結婚に悲観したフランソワはプールに身を投げたのです。運悪く排水中だったため、渦に巻き込まれて下水道へ流されてしまいました。可哀相に、今頃は海の藻屑かと」
「そんなバカな……」
一瞬涙ぐんだ玉留だったが、次の瞬間、毅然とした表情になり、秘書に命じた。
「フランソワは不死身よ。絶対に死んでいないわ。至急捜索を開始しなさい」
すぐさま、秘書は玉留専属捜索隊に出動を要請した。
緊急であることを伝えると、即座にU-125A捜索救援機とUH-60J救難ヘリコプター、そして、US-2救難飛行艇が5編隊になって玉留のプライベート飛行場から飛び立った。それは、海上自衛隊に引けを取らない捜索体制だった。
「太平洋をくまなく探しなさい」
秘書に命じた玉留は、自らの心にも強く言い聞かせた。
必ず探し出してみせる。
フランソワは絶対に生きている!
「ここはどこ?」
「美家のゲストルームでございます」
秘書の声だった。
見ると、ほっとしたような表情を浮かべていた。
「そうだったわね。椙子さんに会いに来たのだったわね。でも」
玉留の表情が一気に暗くなった。
椙子が呂嗚流とハネムーンに行ったことを思い出したからだ。
それでも、なんとか気分を立て直そうと無理矢理笑みを浮かべたが、何かがおかしいことに気がついた。
この部屋に何かが欠けているように思えたのだ。
ハッとして周りを見回したが、探しているものを捉えることはできなかった。
「フランソワは?」
秘書は眉間に皺を寄せて力なく首を振った。
「えっ、何かあったの?」
秘書は何も答えず、横に立つ軽子に顔を向けた。
軽子は薄気味悪い笑みを浮かべていた。
「軽子さん、フランソワはどこにいるの?」
つかみかかるように問い詰めると、軽子がシラッと言い放った。
「渦と共に去りました」
「渦? 渦って何?」
意味がわからない玉留は混乱して気が動転したが、軽子は玉留の動揺をまったく気にしていないかのように淡々と答えた。
「椙子様と呂嗚流様のご結婚に悲観したフランソワはプールに身を投げたのです。運悪く排水中だったため、渦に巻き込まれて下水道へ流されてしまいました。可哀相に、今頃は海の藻屑かと」
「そんなバカな……」
一瞬涙ぐんだ玉留だったが、次の瞬間、毅然とした表情になり、秘書に命じた。
「フランソワは不死身よ。絶対に死んでいないわ。至急捜索を開始しなさい」
すぐさま、秘書は玉留専属捜索隊に出動を要請した。
緊急であることを伝えると、即座にU-125A捜索救援機とUH-60J救難ヘリコプター、そして、US-2救難飛行艇が5編隊になって玉留のプライベート飛行場から飛び立った。それは、海上自衛隊に引けを取らない捜索体制だった。
「太平洋をくまなく探しなさい」
秘書に命じた玉留は、自らの心にも強く言い聞かせた。
必ず探し出してみせる。
フランソワは絶対に生きている!