『世界一の物語』 ~夢犬・フランソワの大冒険~
富裸豚はしばらく大臣を睨んでいたが、表情を少し和らげて、「理由を言いなさい」と続きを促した。
大臣は一度頭を下げてから再び口を開いた。
「ギリシャ国債の約8割が海外で保有されていたのに比べ、日本国債の海外保有比率は1割未満と推定されております。しかも、すべて円建てなのです」
「それがどうした」
大臣の話に納得がいかない富裸豚が貧乏ゆすりを始めた。
「言い換えますと、ギリシャ国債は外国人が持っている資産、対して、日本国債は日本人が持っている資産ということになります」
「だ・か・ら!」
貧乏ゆすりが激しくなった。
「つまり、ギリシャの借金はその多くが外国から借りたものですが、日本の借金はほぼすべてが国民から借りたものと言えるのです」
ん?
どこから借りたって借金は借金でしょう。
同意を求めて富裸豚を見つめると、彼も同じように怪訝そうな表情を浮かべていた。
しかし、それを気にする様子もなく財務大臣は言葉を継いだ。
「日本の国債はそのほとんどを日本人が持ち、しかも、すべて円建てで発行されています。つまり、外貨建ての国債は存在しないのです」
それはもうわかったから!
「このことがとても大事なのです」
円建てが?
「日本政府は円という通貨の発行権限を持っています。ですので、いざという時には日本銀行に通貨を発行させて市中にある国債を買い取らせばいいのです」
じゃあ、ギリシャもユーロを発行して国債を買い取ればよかったじゃない、
「それができないのです。ユーロの発行権限があるのは欧州中央銀行だけなのです。ギリシャにはありません」
あっ、そうか、EUに加盟した時、ギリシャが独自で通貨を発行する権限が無くなったんだ。
「それに、当時のギリシャは長年経常収支が赤字であり、対外純負債国になっていました。ですので、国内の貯蓄が少なく国民から借金することもできませんでした。更に、粉飾会計による信用力低下や高インフレなどに直面しており、現在の日本とはまったく状況が違っていたのです」
なるほど、当時のギリシャとの違いはわかったけど……、
「勿論、通貨発行権限があるからといって、やみくもにお札を刷って国債を買い取ることができるわけではありません」
そうだよね、
「市場に大量のお金が出回ると、お金の価値が下がります。ということは、物の値段が上がることになります。これがインフレです。もし、そのインフレが手に負えないレベルになったら国債の買い取りはしてはいけないのです」
そうか……、
で、今は大丈夫なの?
「日本は長いデフレ状態をやっと脱したところです。それに、ギリシャと違って経常収支の黒字が続いており、世界最大の対外純資産国となっています。その上、国内の貯蓄は有り余るほどあります。ですので、その状態が変わらない限り、円建ての国債を発行しても問題はないと思います」
本当?
限度はないの?
いくらでも発行できるの?
「色々な考え方があります。『現代貨幣理論』というものを提唱する人たちは、独自の通貨を持つ国は債務超過による財政破綻はあり得ない。だから、高いインフレを招かない限り、政府の債務がいくら増えても問題はないと言っています」
えっ、
そんなことあり得ないでしょう、
「勿論、経済学主流派の考え方とは大きく違います。しかし、日本が正にそれを実証しようとしていると主張している人たちもいるのです」
今の日本がそれに当てはまると?
「日本の財務省や日銀の首脳はこの考え方を真っ向から否定していますが、アメリカではこの考えを支持すると公言する議員もいるようです」
「で、君はどう思うんだ!」
イライラしながら聞いていた富裸豚が結論を促すと、大臣が落ち着き払った声で返した。
大臣は一度頭を下げてから再び口を開いた。
「ギリシャ国債の約8割が海外で保有されていたのに比べ、日本国債の海外保有比率は1割未満と推定されております。しかも、すべて円建てなのです」
「それがどうした」
大臣の話に納得がいかない富裸豚が貧乏ゆすりを始めた。
「言い換えますと、ギリシャ国債は外国人が持っている資産、対して、日本国債は日本人が持っている資産ということになります」
「だ・か・ら!」
貧乏ゆすりが激しくなった。
「つまり、ギリシャの借金はその多くが外国から借りたものですが、日本の借金はほぼすべてが国民から借りたものと言えるのです」
ん?
どこから借りたって借金は借金でしょう。
同意を求めて富裸豚を見つめると、彼も同じように怪訝そうな表情を浮かべていた。
しかし、それを気にする様子もなく財務大臣は言葉を継いだ。
「日本の国債はそのほとんどを日本人が持ち、しかも、すべて円建てで発行されています。つまり、外貨建ての国債は存在しないのです」
それはもうわかったから!
「このことがとても大事なのです」
円建てが?
「日本政府は円という通貨の発行権限を持っています。ですので、いざという時には日本銀行に通貨を発行させて市中にある国債を買い取らせばいいのです」
じゃあ、ギリシャもユーロを発行して国債を買い取ればよかったじゃない、
「それができないのです。ユーロの発行権限があるのは欧州中央銀行だけなのです。ギリシャにはありません」
あっ、そうか、EUに加盟した時、ギリシャが独自で通貨を発行する権限が無くなったんだ。
「それに、当時のギリシャは長年経常収支が赤字であり、対外純負債国になっていました。ですので、国内の貯蓄が少なく国民から借金することもできませんでした。更に、粉飾会計による信用力低下や高インフレなどに直面しており、現在の日本とはまったく状況が違っていたのです」
なるほど、当時のギリシャとの違いはわかったけど……、
「勿論、通貨発行権限があるからといって、やみくもにお札を刷って国債を買い取ることができるわけではありません」
そうだよね、
「市場に大量のお金が出回ると、お金の価値が下がります。ということは、物の値段が上がることになります。これがインフレです。もし、そのインフレが手に負えないレベルになったら国債の買い取りはしてはいけないのです」
そうか……、
で、今は大丈夫なの?
「日本は長いデフレ状態をやっと脱したところです。それに、ギリシャと違って経常収支の黒字が続いており、世界最大の対外純資産国となっています。その上、国内の貯蓄は有り余るほどあります。ですので、その状態が変わらない限り、円建ての国債を発行しても問題はないと思います」
本当?
限度はないの?
いくらでも発行できるの?
「色々な考え方があります。『現代貨幣理論』というものを提唱する人たちは、独自の通貨を持つ国は債務超過による財政破綻はあり得ない。だから、高いインフレを招かない限り、政府の債務がいくら増えても問題はないと言っています」
えっ、
そんなことあり得ないでしょう、
「勿論、経済学主流派の考え方とは大きく違います。しかし、日本が正にそれを実証しようとしていると主張している人たちもいるのです」
今の日本がそれに当てはまると?
「日本の財務省や日銀の首脳はこの考え方を真っ向から否定していますが、アメリカではこの考えを支持すると公言する議員もいるようです」
「で、君はどう思うんだ!」
イライラしながら聞いていた富裸豚が結論を促すと、大臣が落ち着き払った声で返した。