『世界一の物語』 ~夢犬・フランソワの大冒険~
「日光浴に付き合わんか?」
 富裸豚の誘いにフランソワはニンマリとほくそ笑んだ。
 取り入るチャンスがやってきたのだ。
 しかし、悟られてはならない。
 感情を表に出さないようにしながら、お供をした。
 
「今日は日本の領土近くの公海に人工島を移動した。あの島影が小笠原諸島じゃ」
 遥か先に島影が見えた。
 あそこが日本か……、
 何故か郷愁のようなものが体の中から溢れてきた。
「日本に帰りたいか?」
 気遣う声が耳に届いたが、すぐさま首を横に振った。
 富裸豚の治世術(ちせいじゅつ)をもっと訊き出したかったからだ。
「国家の黒字経営を実践してこられた覇王様の実行力に感激いたしました。爪の垢を煎じて飲ませていただきたいと思っております」
 すると富裸豚の頬が緩んだ。
 なんと()い奴、と目が語っていた。
 シメシメ、
 フランソワは声に力を入れた。
「覇王様のリーダーシップによって国民の幸福を実現された施策をお教えいただけないでしょうか」
 富裸豚の顔が更に綻んだ。
 なんというこそばゆい(・・・・・)ところを突いてくるのか、というような表情だった。
 しかし、それが長続きすることはなく、すぐに引き締まった顔になった。
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