『世界一の物語』 ~夢犬・フランソワの大冒険~
「1億枚? 予約だけで?」
発売元からの連絡に、流石の呂嗚流も驚きを隠せないようだった。
『美ロックス』のミュージックビデオ付きデビューCDが驚異の受注を続けていたのだ。
椙子作詞、呂嗚流作曲の『愛・平和・未来』という楽曲の素晴らしさに加えて、世界一の美女と世界一のロックスターという組み合わせを全世界のメディアが一斉に報じたところ、音楽に興味のない人まで予約に走るという社会現象になっていた。
勿論、ゲルニカのタペストリーの前で撮影されたジャケット写真も大きな話題になっていた。
そのすべてが二人の想像を超える予約枚数に繋がっていたのだ。
「わたしたちに入ってくる印税は全額寄付しない?」
モルディブのプライベートビーチで心地良い潮風に髪をなびかせていた椙子が、呂嗚流に持ちかけた。
しかし、彼は思案気な表情を浮かべたあと、「寄付もいいけど、自分たちで慈善財団を作らないか?」と新たな案を提示した。
「自分たちで?」
「そうだ。誰かに委託するのではなくて、自分たちでマネジメントする組織の方がいいと思う。どういう慈善事業をどういう規模でどういう方法でやるのか、それを全部自分たちで決められる組織にするんだ。そして、君が理事長になればいい」
「えっ、わたし? わたしが?」
「そうだ、君だ。〈愛・平和・未来〉というコンセプトを考えた君自身がリードすべきだと思う。俺は副理事長として君を全力で支える」
「まあ~」
胸がいっぱいになった椙子は呂嗚流の首に抱きつき、思い切り彼を抱きしめた。
すると呂嗚流が奇妙な声を出した。
「グゥ~、死ぬ」
それは1回では終わらなかった。
「死ぬぅ~~!」
それを喜びの声と勘違いした椙子はなおも強く抱きしめた。
すると声が止まった。
その瞬間、嫌な予感がした。
見ると、呂嗚流は口から泡を吹いて、白目を剥いていた。
「えっ、どうしたの?」
驚いて体を揺すったが、正気に戻る様子はみじんも感じられなかった。
「誰か助けて!」
絶叫する椙子の腕の中で呂嗚流は口から泡を吹き、白目を剥き続けた。
発売元からの連絡に、流石の呂嗚流も驚きを隠せないようだった。
『美ロックス』のミュージックビデオ付きデビューCDが驚異の受注を続けていたのだ。
椙子作詞、呂嗚流作曲の『愛・平和・未来』という楽曲の素晴らしさに加えて、世界一の美女と世界一のロックスターという組み合わせを全世界のメディアが一斉に報じたところ、音楽に興味のない人まで予約に走るという社会現象になっていた。
勿論、ゲルニカのタペストリーの前で撮影されたジャケット写真も大きな話題になっていた。
そのすべてが二人の想像を超える予約枚数に繋がっていたのだ。
「わたしたちに入ってくる印税は全額寄付しない?」
モルディブのプライベートビーチで心地良い潮風に髪をなびかせていた椙子が、呂嗚流に持ちかけた。
しかし、彼は思案気な表情を浮かべたあと、「寄付もいいけど、自分たちで慈善財団を作らないか?」と新たな案を提示した。
「自分たちで?」
「そうだ。誰かに委託するのではなくて、自分たちでマネジメントする組織の方がいいと思う。どういう慈善事業をどういう規模でどういう方法でやるのか、それを全部自分たちで決められる組織にするんだ。そして、君が理事長になればいい」
「えっ、わたし? わたしが?」
「そうだ、君だ。〈愛・平和・未来〉というコンセプトを考えた君自身がリードすべきだと思う。俺は副理事長として君を全力で支える」
「まあ~」
胸がいっぱいになった椙子は呂嗚流の首に抱きつき、思い切り彼を抱きしめた。
すると呂嗚流が奇妙な声を出した。
「グゥ~、死ぬ」
それは1回では終わらなかった。
「死ぬぅ~~!」
それを喜びの声と勘違いした椙子はなおも強く抱きしめた。
すると声が止まった。
その瞬間、嫌な予感がした。
見ると、呂嗚流は口から泡を吹いて、白目を剥いていた。
「えっ、どうしたの?」
驚いて体を揺すったが、正気に戻る様子はみじんも感じられなかった。
「誰か助けて!」
絶叫する椙子の腕の中で呂嗚流は口から泡を吹き、白目を剥き続けた。