『世界一の物語』 ~夢犬・フランソワの大冒険~
 その頃、退院後のリハビリを終えてすっかり元気を取り戻したフランソワが、富裸豚に向き合っていた。
「覇王様のお陰でございます」
 死ぬ間際で聞いた富裸豚の言葉「諦めるな! 成功するまで諦めるな!」に励まされたことを伝えた。
 しかし、呂嗚流や椙子様のことは言わなかった。
「ところで、犯人たちは」
 富裸豚はニヤリと笑った。
「自己中駄王と側近を捕らえて、罪の償いをさせておる」
 月に持つアトランティス大国の鉱山でレアメタルの採掘をさせているという。
 そして、夜にはウサギに代わって餅つきをさせているらしい。
「奴らはこれから100年間地球に帰ってくることはない」
 結構なお仕置きだ。
 これで彼らも反省するだろう。
「それはそうと、自己中駄王がいなくなったゴンドワナ大国は誰が治めるのですか?」
 すると、富裸豚はニヤリと笑って自らの顔を指差した。
 えっ?
 聞いて驚いた。
 彼らを月に移送すると同時にゴンドワナ大国で国民投票を行ったのだという。
 このままゴンドワナの国民でいたいか、それともアトランティスの国民になりたいかと。
 すると、99パーセントの国民がアトランティスを選んだという。
「両国が合併して『アトランティス超大国』に生まれ変わるのじゃ」
 それは、自己中駄王の邪心がゴンドワナ大国の滅亡に繋がったことを意味していた。
 組織はリーダーで決まる! 
 フランソワはその言葉を胸に刻んだ。

「ところで、ワシを助けてくれた貴君に褒美を使わす。なんでも好きなものを言うがよい」
 ありがたい申し出にフランソワは即答した。
「インド洋のモルディブへ送り届けて下さい」
 主人である椙子様に会いたいと力説した。
「それが……」
 富裸豚は顔をしかめた。
 そして、残念だというふうに首を横に振って、偵察衛星が捉えた映像をフランソワに見せた。
 そこには、顔を天に向けたまま口に泡を貯めて、白目を剥いた呂嗚流と、目をはらしているような椙子の姿が映っていた。
 フランソワは何がなんだかわからなかったが、モルディブではないようなので、そこがどこなのか教えて欲しいと頼み込んだ。
 すると、カメラがズームアウトしてより広い場所を映し出し、見覚えのあるプールが映った。
 それだけでなく、呂嗚流と椙子の横で空を見上げている玉留の姿が見えた。
 そして、その横に軽子がいた。
「椙子様の実家……」
 富裸豚が頷くと、フランソワが嘆願した。
「ここへ送り届けてください。今すぐに」
 富裸豚は大きく頷き、部下に指示を出した。
「位置情報確認誘導付きロケットパラシュートを準備せよ!」


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