『世界一の物語』 ~夢犬・フランソワの大冒険~
 取り囲む全員の視線が呂嗚流に注がれる中、椙子が彼の手に触れた。
 そして、祈りを込めるように強く握った。
 その途端、彼の顔が思い切り歪んだ。
「マズッ!」
 唇に付いたフランソワの尿を手で拭った。
「呂嗚流様!」 
 椙子が彼の首に抱きついた。
 余りに嬉しかったのか、ギュッと抱き締めた。
「グヘッ」
 呂嗚流がまた白目を剥き始めた。
「あっ!」
 椙子が慌てた様子で呂嗚流から離れた。
 ふ~~、
 呂嗚流が大きく息を吐いた。
 その瞬間、両手に繋がれていた点滴チューブが弾け飛んだ。
「絶好調だぜ!」
 呂嗚流が空に向かって吼えた。
 すると、そこでまた場面が変わった。
 二人の女と一人の男と一匹の犬が額を突き合せていた。
 何やら相談しているようだった。
 
 
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