『世界一の物語』 ~夢犬・フランソワの大冒険~
音楽は世界を救う
        ~ 第七幕:音楽は世界を救う ~
 
「愛・平和・未来……」
 フランソワが呟くと同時に玉留も同じ言葉を口にした。
「そうなの。それがキーワードなの」
 かつてないほど元気になった呂嗚流の横で椙子が頷いた。
 そして、「チャリティーコンサートをやろうと思っているの。その収益金とCDやビデオからの収益金で『美ロックス慈善財団』を立ち上げて、地球の環境保護や貧困、紛争解決に役立てる活動をしたいの。協力してくれる?」と同意を求め、具体的なプロジェクトの説明を始めた。
 それは壮大な計画であり、誰も考えつかないような異次元のプランだった。

「サハラ砂漠の緑化……」
 流石の玉留も腰を抜かしそうになった。
「地球温暖化の影響が世界各地に及んでいるの。大量の二酸化炭素が空気中に放出されて、地球が温室のようになっているの。これをなんとかしなければいけないの」
 椙子は真剣な表情で訴え続けた。
「世界の平均気温はジリジリと上昇を続けていて、今後100年間で更に気温の上昇が確実視されているの。それによって世界各地で異常気象が起こっていて、巨大な台風や竜巻や異常高温や干ばつなど多くの災害を引き起こすことが強く懸念されているの。でもそれだけではないわ。海水温の上昇が海面水位を押し上げて、海抜の低い世界中の島国に水没の恐怖を与えているの。なのに、」
 京都議定書やパリ協定など地球温暖化対策への話し合いや取り組みが行われてはいるが、各国の足並みはバラバラで、その実行力は(はなは)だ疑わしいと椙子は顔を曇らせた。
 すると、呂嗚流が肩に手を回して引き寄せ、大丈夫だよというように腕を擦った。
 それで落ち着いたのか、椙子は姿勢を戻して言葉を継いだ。
 
 
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