『世界一の物語』 ~夢犬・フランソワの大冒険~
「政治家任せにしていては地球がダメになってしまうわ。だから、一人一人が行動を起こさなければいけないの。二酸化炭素を排出しない生活を心がけなければいけないのよ」
 化石燃料を使わない生活、例えば太陽光や風力などの再生可能エネルギーの使用拡大、電気自動車や水素自動車への転換、省エネ製品の優先購入、シェアリングの推進など、個人で出来ることを訴えていきたいという。
「そのためにも世界中の人々が注目してくれるイベントが必要だと思うの。誰もがあっと驚くようなことを計画して、世界中の関心を集めたいの」
 それが、サハラ砂漠緑化計画だった。
「植物を素材とした超高性能吸水ポリマーで土壌の水分保持を図って、乾燥に強いナツメヤシを植えて、巨大な森を造る計画なの。それが完成すれば、大量の二酸化炭素を吸収して温暖化防止につなげることができるの」
 多くの国にまたがって広がるサハラ砂漠は面積が約1,000万平方キロメートルで、世界最大の砂漠とされているから、緑化計画が及ぼす影響はとてつもなく大きいと力説した。
「アメリカ合衆国とほぼ同じ面積の砂漠がアフリカ北部に広がっているの。その面積は今も毎年拡大しているの。そのことによって昔からその土地に住んでいた人たちは生活できなくなり、貧困や内紛の原因にもなっているの。だから、サハラ砂漠の緑化は地球温暖化防止だけでなくアフリカの安定・発展にも繋がるの。そして、全世界の安定・発展に繋がっていくの」
 大きく頷いた呂嗚流が深刻な表情で付け加えた。
「ヨーロッパの異常高温の原因の一つがサハラ砂漠からの熱風と言われているんだ。それがどれほど大きな影響を及ぼしているか」
 熱波による昨年の死者数は6万人を超えているという。
「もう時間は残されていないの。議論している場合じゃないの。行動を起こさなければならないの。このままでは人類や多くの生物が死んでしまうの」
 そんなことになったら耐えられないと訴えた。
 玉留の反応は早かった。
「椙子さん、全面的に協力するわ。毎年1兆円を寄付するわ」
 顔色一つ変えずに即決した。
 なんという太っ腹、
 玉留がまた好きになったフランソワは、「ワン♪」と気持ち良く吠えて、「僕は富裸豚覇王様にお願いしてみます。あのお方なら物凄くスケールの大きな支援をしてくれると思います」と尻尾を振った。
 
 
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