血管交換シヨ?
「恋愛なんか要らない。ツキくんの都合で、自分勝手にスズを扱ってくれていい。愛してくれなくてもいい。こころも体も酷くしていい。小説への色にされたっていい。その覚悟くらいできてるよ。だからお願い。スズを置いてかないで」

「そんなことできるわけないだろ。もうこれ以上…」

「スズを他の子と一緒にしないで。スズはツキくんが居ないなら生きてる意味なんかない。脅しだって思ってくれてもいい。でも本当だよ?ぐちゃぐちゃになって、ツキくんと一緒に居た日々が地獄になったって、ツキくんが居ないほうが死んでるのとおんなじなの」

「地獄だよ」

「うん」

「ここから先はきっとスズにとって本当に地獄。それでもいいの」

「うん。ツキくんとならどこだって」

「バカだな」

「そうかも」

「俺はきっとスズが望むようにはスズを愛さない。それでもいいの」

「好きにして。酷くしてもいいって言ってるでしょ」

「ほんと…ここまできて惑わせないでよ…」

おでこを手のひらで抑えて
深く息を吐き出したツキくんはゆっくりと歩き出した。

コンビニの袋を持っていないほうの手で
スズの手を握ってくれた。

紅い月は雲で隠れてしまっている。

ツキくんとスズの歩む道を照らしてくれる月明かりは無い。

地獄。

スズ達はきっと、
絶対に幸せにはなれない。

それでもいいの。
ツキくんが小説に首を絞められて死んでしまう日まで、
スズだってバカみたいにその夢を追うよ。

ねぇ、一緒に地獄でも幸せだって勘違いしていようよ。
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