血管交換シヨ?
「んー…スズ…」

「ツキくん、おは…」

「だいじょうぶ」

「え?」

おはよう、って言いかけたスズの体を
ツキくんの両腕が包み込む。

ギューッてされて
スズの額がツキくんの胸板に押し付けられる。

「大丈夫、大丈夫」

「ツキくん?何が?」

「大丈夫だから」

ツキくんの胸板からそっと額を離して、
上目遣いでツキくんを見たら、目を瞑ったまま微笑んでいる。

体は抱き締められたまま。

大丈夫、を繰り返すツキくんのくちびるにキスをしてみたら
″そっとじゃない″キスでお返しされてしまう。

寝惚けてるのかな。
スズが何か不安に襲われている夢でも見てるのかな。

夢の中でもツキくんは優しい。

今日もカーテンの隙間から差し込む光が
壁のポストカードの少女を牢獄みたいに閉じ込めている。

スズもおんなじだよって、少女に囁く。

スズだってここからもう逃げられない。
逃げる意思だって無い。
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