血管交換シヨ?
「そんなこと…」

「好きだって想う気持ちが当たり前になってほしくないんだ。鈴芽は俺が思い通りに与えてくれるから好き?俺が思う通りに応えなくなったら嫌いになっちゃう?そんなのは不安だからさ」

「試してるってこと?スズのこと」

「試してるって言ったらダサいけど」

「ダサいよ。信じてないじゃん。スズのこと」

「それはきみもおんなじでしょ?」

「なんで?」

「俺のこと信じるのが怖いから与えてほしいんでしょ。目に見えないものは不安だからね。きみも、俺も」

「それってやっぱり、じゃあツキくんだって予防線張っときたいってことなんじゃないの。不安だから隠す為にスズにいじわるしてるってことなんじゃないの」

「さーあ?どうですかねぇ」

今度こそ、ツキくんはニッて笑って
読んでいた小説に視線を戻した。

スズだって与えてもらえることが
当たり前だなんて思っていない。

こうやってツキくんの隣で笑える時間は
いつだって奇跡だ。

この先もずっと変わらずにそばに在るなんて
過信はしていない。

だからこそ、
その時間が在る時は我儘になってしまう。
欲しくなってしまう。

ツキくんの言う通り。
不安だからだ。

穴の空いたバケツみたいに。

淹れても淹れても
溢れていく。

全然足りなくなってしまう。

情けない。
ダサい。

全然いい子になんてなれないけれど
欲しくて欲しくて堪らない。

だって言葉でなんて言ったって
ツキくんは″スズのもの″なんかじゃないから。
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