血管交換シヨ?

ポンコツ共犯者

ツキくんに貰った小説は
解説を除いたら本編だけで三百二十三ページ。

ごく一般的な分量だとは思うけれど
普段から小説を読む習慣のないスズにとっては分厚い本だった。

それでもツキくんの言っていた通り。
思っていたよりもお堅い文体じゃないし、
読みやすいと感じた。

唯一違ったのは「難しい漢字ばかりじゃない」ってツキくんが言ったこと。

確かに、すごく時代を感じるような見たこともない漢字ばかりではなかったけれど
スズはたぶん、人よりも語彙力や知識が乏しい。

からっきし読めない漢字、
読めても意味が浮かばない言葉。

それはきっとツキくんが思っていたよりも
スズはその壁にぶち当たってしまった。

だから分からない単語が出てくるたびに
インターネットで調べた。

忘れてしまいたくなかったから
バインダーや増減可能なルーズリーフなんかを買ってきて
専用の、スズオリジナルの手作り辞書も作った。

読み方も分からない、調べても出てこない単語も書き留めて、
いつかツキくんとのおしゃべりのネタにしようと思った。

この作業はすごく楽しかった。
知識が増えていくことも、
ツキくんと共通の繋がりが持てたような気がしたことも。

スズは少なからず興奮していたんだと思う。

分かりやすく、浮かれていたんだと思う。
< 23 / 82 >

この作品をシェア

pagetop